へき地医療・鹿児島県2
5.メディポリス指宿
産官学連携の陽子線センターを中心に据えた医療・健康の拠点構想。
- 総事業費108億円
- 国からの交付金24億円
- 鹿児島県24億円(補助金5億円・融資19億円)
- 指宿市10年間で3.5億円の奨励金
運営は㈱新日本科学、グリンピアの跡地利用、公園、宿泊施設完備の広い敷地342ha、リゾート開発されたものを健康・医療にアレンジし長期滞在で外科手術に頼らない、痛みのない治療と予防医療を実施。
陽子線施設建設は日立製作所が世界的に評価されているが、ここも兵庫県の放射線センターの技術を元に建設されたものです。治療は特に前立線がんや膵臓がんなどに有効とされ、保険適用外だったものが近年160万円まで保険適用となった。近年放射線治療施設はコンパクトになり都心部にも導入され始め先行優位性は薄れる。指宿の特徴は特に海外(香港、台湾、中国)からの高額所得者の診療希望が増えていること。現地駐在スタッフも置きながら希望と治療が適合するマッチング精度を如何に上げるかが課題とか。ちなみに陽子線治療に係る費用は欧州では1000万円、そのため此処での外国人治療費は平均600万円の設定。渡航費用や滞在費を含めても格安、しかも看護師やスタッフが患者の要望を丁寧に聞き、治療の説明も行う事に驚く人が多いとか。
6.指宿市役所
メディポリスの所在地としての課題や期待を市政レベルでどう評価しているのかを伺いました。平成14年グリンピア指宿閉鎖のマイナスを回復することが最大課題であった。
上述の国県の補助金に加え、市からの支援(10年間で3.5億円)とは固定資産税額10年分、平成30年からは通常の課税に戻る。またメディポリスでの雇用創出も140名となり、グリンピア時代の雇用数を上回ったと聞く。
指宿市民のがん罹患率は高く課題があるわけではない、健康的に特別な課題があるわけでもない。従って指宿市民にメディポリスを知ってもらうことは必要だが多くの市民が陽子線治療を受けることが目的では無い。つまり今後の市の目的は、年間8万人が宿泊する外国人観光客をメディポリスと連携して、温泉・食などの観光資源と併せてどう発展させ発信していくのか?ということに尽きると感じました。
7.鹿児島救急医療遠隔画像診断センター
24年4月鹿児島県医師会による運営でスタート、事業内容は鹿児島県の市街地域の放射線医師不足を補うため、救急医療における画像診断サービスを24時間体制で行うもの。
- 診読センターは、回線の種類を問わずスムーズな画像転送、依頼者と診読医師の支援
- 診読専門医は県内外の放射線専門医と連携し、3つの診読施設(民間病院)と県内外の参加医師が担当する。
参加医療法人は41、年会費と読影料で運営しているが現在のところ採算には乗っていないが依頼件数も増えている。また県医師会が経営する11の病院との関係は県医師会の高評価につながるなど良い影響は計り知れない。
背景には放射線医師の不足、MRIなど高度な医療機器の普及、データ通信速度・安全度の向上などがある。今後は最終的な医療判断は医師によるのだが、その過程での情報処理(過去の症例や薬剤効果の履歴、患者状態の傾向と対策など)はAI活用が有効であることは間違いない。一方、では臨床医(執刀医)が現地に張り付き、放射線医師(指示医師)の集約化を促進すると、これはこれで問題が出てくるようにも感じた。
現在鹿児島県の病床、医師数は過剰になっていると聞く。(数値が低い離島を含んでトータル)