インフラ老朽化への対応
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本年度の兵庫県議会建設常任委員会の特定研究テーマでもある表題、長崎県立大学での「橋守」の取り組み調査や、沖縄県でのコンクリート塩害への取り組み調査などを経て、今回はこのテーマの学術的権威である政策研究大学院大学センター所長「森地 茂」氏に講演をいただきました。
現状
コンクリートの寿命は約50年と言われているが、その品質は多少バラつきがあるようで、骨材や鉄筋、砂などにより変化する。 要因で一番大きいのが耐荷重、つまり重いモノが乗る、通ることにより劣化する。次に天災、風雨や塩の影響、そして経年変化らしい。
メンテ計画
平成26年国交省はインフラ長寿命化計画を決定、それを受け兵庫県でもインフラメンテ十か年計画を策定 緊急対応するものと定期検査するものなど、優先順位を付け長寿命化工事を行っている。
米国からの教訓
1930年代建設の橋梁が1980年ごろから落ちる事故が多発。
1980年の老朽化橋梁は25万橋、現在14万橋、補修は続けられたが未だ解決していない。つまり
- 累積すると回復に長期間
- 細部の部材の欠陥の検知
- 専門家が不足(自治体・民間)
そもそも疲労を想定して設計していないから、メンテ計画はゼロからスタートしている。日本では大規模災害(豪雨、高波、強風、地震)の度に法律が変わってきた。例えば東海東南海地震や富士山噴火を想定した被害予想と防災・減災計画が必要で、これら予想を元にハード・ソフト整備を行うことは複雑系であるだけに設計、財源ともに困難と言わざるを得ない。
長崎県立大学・橋守
長崎県内の多くの島を結ぶ道路は橋でつながっている。この橋のメンテナンスを怠ると県民生活に大きな影響が出るのだが、一気にすべてを改修とないかない。そこで優先順位を付けて改修するが経年変化で随時更新する仕組みが必要となる。マンパワーの不足に加え、財源も不足している。そこで民間の出番となる
- 住民で地元の橋の老朽化をかなりの精度で発見できる人材を育成
- 地域の建築会社で老朽化防止工事ができる人材の育成(有料)
- 更新マネジメント(技術・人材・スケジュール)できる専門家の育成
この仕組みを大学内の研修組織として研究し、その手法は国土交通省より正式認可を受けている。定期点検やメンテ作業は県外業者でもある大手ゼネコンばかりでなく、技術力さえあれば地元の中小建設業者が十分こなせる作業になることも安全の次に重要です。