令和3年度予算審議 産業政策
1 産業立地促進の評価について
兵庫県産業立地条例は平成27年4月1日に産業集積条例を改正し、県内全域での幅広い産業立地を促進するため、施行されました。以降、これまで支援対象の拡充など見直しが行われています。特に、令和2年4月から、対象業種を製造、運輸、卸売、建設などに加え 小売り、宿泊、ホテル旅館飲食サービスなど、ほぼ全業種に拡充されました。さらに、令和2年6月より新型コロナウイルス感染症の影響により、特定国・地域に集中するサプライチェーンのぜい弱性が顕在化したことから、産業立地条例に基づく補助金等の拡充を図り、生産拠点の県内回帰をはじめ、サプライチェーンの強化・再構築を目指す製造業等を支援することとされました。支援対象は
- 海外の自社生産施設に類する生産施設を県内に新増設する者
- サプライチェーン強化のため、特定国に依存していた製品・部品等の生産施設を新たに県内に整備する者
- 新型コロナウイルス感染症の影響により、需給が逼迫した医療物資・医療機器など、県民の健康な生活を守る上で重要な製品の生産施設を新たに県内に整備する者
とされています。拡充された支援策の内容は、
税の軽減措置として、不動産取得税1/2 (促進地域は3/4)、法人事業税1/2(5年間)(促進地域3/4(5年間))です。
補助金は、設備投資額の6%(促進地域10%)、新規正規雇用1人45万円 (促進地域90万円) などとなっています。
ここでいう促進地域は、但馬、丹波、淡路の各地域と、西脇、多可、神河、赤穂、たつの(旧新宮町区域のみ)、宍粟、上郡、佐用の各市町です。
サプライチェーンの国内回帰を促す、ということは、マスクや医療用手袋、アルコールや防疫服が「マスク外交」「ワクチン外交」という言葉があるように、戦略的な位置づけがなされ、安全保障を揺るがしかねないモノになりえることから、すべての産業の一定割合を出来れば国内工場としたい趣旨の全国一律の政策であることに注意せねばなりません。
さて、産業立地条例の促進地域に指定されている淡路島の企業誘致成功例としてパソナが思い浮かぶ人が多いと思いますが、㈱プライミクスという会社が淡路島の淡路市へ2015年に本社を移しています。
「社員の快適な暮らしの土台となる気候風土(豊富な食、温暖で関西圏と距離が適当、豊かなアウトドア・スポーツレクレーション環境)これからの企業は300年先も快適に社員が暮らせる地を選ぶべき、ワークライフバランスの根本的解決として行政と地域と企業が協働して社会的責任を果たしたい。」 代表取締役 古市 尚氏の印象的な言葉です。
㈱プライミクスのハード整備は
1景勝地に社屋工場と社員寮、レクレーション棟を整備
2どこからもでも海が見える事務所レイアウト
3自転車部、ゴルフ練習場、ビリヤード、カラオケ、シアター、食堂、洗車場、バーべキューハウス整備などです。
また社員食堂では地元淡路産食材80種を契約購入し、美味しさに加えカロリーや成分表示他、社員の健康管理も意識したものです。
「社員の快適な暮らし」の実現に重きを置いた社の方針とその土台となりうる気候風土、が企業立地の選択肢なのかもしれません。
企業にはそれぞれの価値観がありますが、いろんな企業から選ばれる魅力が必要です。プライミクス株式会社のように兵庫県内への移転の動機となるような兵庫を選んでもらえる強みや魅力などの要因についてどのようなことだと認識しているのか?その評価と魅力づくりのためのこれからの取組も含め、当局の所見を伺います。
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令和元年度 企業立地件数175件、本社立地10件、生産誘発金額1兆3420億円、雇用誘発数62290人
再質問 促進地域は支援条件が高額(不利地)、地域からも望まれている場所?
促進地域への立地件数や進出企業特性について傾向があればお聞かせ下さい。
促進地域で更に必要なことなどもお気づきでしたらお願いします。
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2 コワーキングスペース開設支援事業について
兵庫2030年の展望リーディングプロジェクトでは、
- パンデミック時代の危機管理 ②デジタル革新の加速
- 産業競争力の強化・リスク耐性の強化 ④そして分散型社会への転換
この4つが大きなポイントとして今後兵庫県がとるべき施策の方向性とされています。予算委員会・本会議一般質問で私は、在宅ワークやサテライトオフィースなどを含むテレワークの可能性を取り上げたのが2019年、通勤に係る時間費用・ストレスの削減、危機管理、大部屋で作業することの非効率性を指摘しました。あくまで緊急的な代替案としてテレワーク機能を整備するという回答でした。
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すでに先行している熊本県庁や更に進んでいる住友電子、カルビー、江崎グリコなどは特に本社の経理部門、マーケティング部門、製品開発部門などはジョブ型雇用やフリーランス採用と同時に従来の日本型メンバーシップ雇用が基本ではありますが、かなり自由度の高い勤務形態を認めています。 最も貴重であるが最もコストが掛かる、同じ時間に同じ場所に集まることを可能な限り減らす、職場の分散と成果の集中が起こっている好事例です。
コロナ禍で一気に必要に迫られその活用が注目されるテレワークですが、兵庫県の試験的、小規模な事業実験は「多自然地域IT関連事業所振興支援事業」として新たにIT関連事業を立ち上げようとしている人を対象に2013年スタートしたと記憶しています。当時私は「住まいと職場の距離感が変わる」「クリエーターは多自然地域を好み、立ち上げコストも低いのではないか?」と大きな期待を持ちました。
支援内容は家賃補助180万円 通信回線補助180万円 IT人材費180万円 事務所改修補助150万円 以上最大補助額で690万円でした。
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その後ひょうごIT事業所開設支援事業、兵庫高度IT起業家等集積支援事業、と少しづつバージョンアップがなされてきました。コワーキングスペース開設支援事業では、運営支援型と整備支援型の二種類の支援メニューが用意されました。支援内容は、運営支援型は3年間支援付き、整備支援型は高額で初期投資のみであるが、本事業への期待度はどれほどか? また、本事業全体で実績数が令和元年度13件となっているが、それらも含めて事業評価と今後の展望について所見を伺う。
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IT関連の業種に絞ってスタート コロナ禍でテレワーク、しかも家で仕事がしにくい方も多いと聞く、少し広目のサテライトオフィースを所属会社を問わず数名で使う、あるいは企業の経理・デザイン設計部門など地価の高い都市部の本社に置く必要性が薄くなってきた。この際、生活環境のよい多自然地域(空き校舎や古民家)に部門ごと移設しよう等といった動きはないのか? それを迎える体制整備を市町自治体が積極的に取り組むには大きなチャンスです。市町の関心度は? 方向性として推進すべきだと思いますが?
3 地方創生に資する地域経済対策について
人口が増加しないまでも人口減少速度を緩やかなれば市町や兵庫県は幸せになれるのか? 経済のパイが人口減少で縮小する中での経済政策で近隣府県に勝つことが目標であるならゼロサム、それは単なる消耗戦です。 地域創生を自己満足や地域アイデンティティーの確立などの尺度では多様な判断があり得るが、経済という尺度で考えれば極めて単純、資本主義原理からは県民一人当たりの所得額・あるいは可処分所得を上昇させることに尽きます。
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産業連関表という統計データがあります。産業連関表は各産業や家計などの経済主体が相互に行なった財・サービスの取引状況を一覧表にしたもので5年ごとに集計されます。いくつかの自治体は市内経済循環がどうなっているのかを更に専門的に分析しています。
豊岡市が2017年豊岡市産業連関表・朝来市が市経済の分析と称してまとめています。
豊岡市の年間生産額は5,171億円。このうち中間投入額(生産に必要な原料・機械、卸、輸送、生み出された費用)は2,229億円(43.1%)新たに生み出された価値から減価償却を差し引いた粗付加価値合計2,942億円、うち雇用者所得は1,387億円(47.1%)。
そして民間消費、国県市・市民が行った資本形成、預金・在庫の総額である最終需要額は7691億円です。貿易における黒字赤字を表す域際収支は移輸出額2250億円、移輸入額2520億円、収支は△270億です。
産業別に見ると
- 小売り卸売りでは移輸出額300億円 移輸入額450億円
- 医療福祉は46億円の黒字
- 宿泊・飲食サービスは235億円の黒字
- その他非営利サービス122億円の黒字
- 皮革・毛皮製品(かばん)83億円の黒字
- 農業は45億円の黒字
- 電子部品は68億円の黒字
- ゴム・プラは76億円の黒字
2011年との比較では経済規模は7.2%も縮小したが、域際収支は改善しており特に宿泊、カバン、プラスティック・ゴム、電子部品は外貨を稼ぐ力を維持、またはアップしている。移輸出率0.44
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朝来市の場合、総供給額(公的投資や補助金を含めた総需要額)3154億円、市内総生産額2006億円 中間投入額1010億円(50%)
粗付加価値額996億円
- 移輸出額1012億円 移輸入額1148億円、136億円の赤字
- ・農業4億円
- ・飲料食品47億円
- ・金属製品140億円
- ・電気ガス熱供給114億円
- ・対事業所サービス144億円の赤字
- ・商業56億円の赤字 移輸出率50.4% 市内生産の5割が外貨獲得している
工業規格品や関連サービス(汎用品)が低価格で日本の津々浦々まで安定的に供給され、住民消費の多くがそこに消費されていることを考えると商業、飲食、通信の立場は微妙です。(不要だとか地域経済に寄与していないと言っているのではありません)この部門では地域差、努力の差が出ないのです。
- 規模は小さいが地域内調達率の高い一次産業や一次産業派生(六次産業化)地域由来のオリジナルサービスを伸ばすこと
- 中間投入=生産に必要な原材料やサービスの購入を出来るだけ地元で行うこと(域内ビジネスマッチング)
- 地域外の巨大マーケットで売ること 県外、国外、出来れば実店舗を持たないネット通販で地域内製比率の高い商品・ソフトやサービス
- 原材料など生産に必要なものは外部依存しても高付加価値を生み出すものを先を見通して先行開発し続ける
- 航空機産業などいわゆる裾野が広い産業のクラスター化を図る
いかがわしい経営コンサルみたい
これらが域内自給率を上げ地域を豊かにする方法だと思われます。
兵庫県の経済循環高=基礎自治体の経済循環高の合計。
地域資源の利活用拡大に加え、中間投入の内訳で市内、近隣地域、兵庫県下、(経済圏)で購入することは可能か不可能か別にしても地域経済循環高を上げる上では重要です。
地域創生の視点に立った経済政策、すなわち地域経済循環高を上げるための産業政策について、本県の取組、既存事業はどう寄与しているのか? 今後の事業方向性も含めて伺います。
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経済連関表、実に興味深いデータです。正確性は?
結果から予想できる方向性、相手企業があることですが、企業にとって産労部にとって有益な基礎データでしょうか? そうだとしたらどの程度活用されていますか?
五年ごとの集計、一部自治体と県は更に分析しています。経済振興策を考える時、どのように活用されてますか?
グローバル経済のメリットを我々は教授してきた。商品力とは機能性能デザイン割る販売価格 プレミアを付けなければ大量生産が優位。
ネット上にはリアルな店舗では品ぞろえ不可能な 多種多様な品があります。(格安・過去発売されたものも、中古も含めて)
商業
何処で買っても同じ品質が約束されている工業規格品、汎用品、商工会員内での簡単なビジネスマッチング 相見積もりご地元業者と再交渉ではないか?
県の行うビジネスマッチングも優先順位は県内でしょう。
緊急時の対応などサービスも多少差はありますが、PC、車、事務用品 どこで購入してもモノの保証は製造者責任ですから。
県の建築土木事業、発注でも同じです。これは産労所管ではありません。
法田 企画財政局長
有田 財政課長 ずっと部局審査に立ち会われています答弁機会もなく気の毒ですから、私からのささやかな送りものです。どうか嫌がらずお持ち帰り下さい。