真夏の政調会Ⅲ 既存大手企業の誘致メリットを考える
兵庫経済と雇用に最も効くのはどんな施策か?
「それは企業誘致です」と言う考えもあれば、創業支援、地場産業育成も挙げられる。県施策も多岐に渡る。県が絡む大手企業誘致は家電大手が話題になりました。投資金額の3%を企業に還元する制度でパナソニックの尼崎進出、姫路では東芝キャノンの有機EL誘致計画もあった。亀山シャープの進出は6%還元を打ち出した堺市に負けたが、結果的には兵庫でなくて良かった。 世界的な規模競争にさらされた家電製造業は長期安定的な先行投資が出来る状況ではなかったのです。
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では大手工場誘致のメリットは何か?
県民にとっては雇用機会が増えること 給与が上がり労働環境が良くなること 就業選択肢が増えることだが、果たして正規雇用どれだけ増えたか? 経済効果を考える時、県民所得でカウントすることに意味がある。(できれば一人当たり)
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兵庫県や自治体にとってはどうか? 県所有の分譲地が売れる事、固定資産税・法人事業税・外形標準課税・所得税が得られること
極論を言えば、雇用ゼロでも自治体へのメリットは税収としては非常に大きいのです。では今後増えるAI化されたほぼ無人の工場誘致の県民へのメリットは何でしょうか? 私は直接的効果を言い表せない。
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物販によるお金の流れを考えてみよう。
最も地元への経済効果が高いのは原材料仕入れ、加工(付加価値・電力他経費)流通、販売(店舗出店地、販売経費)それらをすべて地域に限ることです。では具体的な業種とは何か? 地場産品を使い、地域内で加工し、社員は地域住民、販売店舗は地元に置くことです。有名なロールケーキや農産物直販がこれに当たります。また規模を拡大するなら売り先は地元に加え、地元以外に売ることです。ネット通販なら出店コストも外部に漏らすこともありません。
では最も効率の悪い業種は何でしょうか?
それはチェーン店のフランチャイジーです。地元の消費をすべて本部に吸い上げられています。消費生活ではネット購入が一番効率が悪くなります。ほぼ100%外部流出、店舗さえも地元に無いのでコンビニのような地元雇用さえ発生せず、地元に落とすのは宅配の一部を担った手数だけが経済効果です。
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このように地元経済効果や経済循環を考えれば、外貨獲得しかも生活に欠かせないモノの地域外部への販売シェアアップは大きいのですが、簡単ではありません。 観光も交通費や旅行代理店手数料以外はほぼ地元に還元される業種です。
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原材料・加工・流通・販売のどこまでを獲得するのが良いかはモノによって違います。例えばジャパネット高田は、大手家電のテレビ通販ですから、九州地区での製造による還元はほぼゼロ、しかし人海戦術ですから多数の電話対応で女性を雇用しています。このように業種を見て行くことが重要です。規模の大小を問わず最大効率を求めるなら地場産品加工品を地場で生産し、無店舗で外部ユーザーに直接売ることとなります。
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即効性、金額ベースなら既存大手企業の県内進出ですが、地域経済への歩留りを考慮すると企業誘致最優先とはならないのです。企業誘致では無人化に備えて一定の雇用条件を付けることなどは必要ですね。(相手のあることですが)