~県立高校通学区域改変に見るマネジメント~
私の子どもの同級生の数人は、いわゆる「名門」有名大学に進学後、自分は何を職として生きたいのかを発見し、転校、あるいは退学しています。人生においてその目標が発見出来たことは歓ぶべき事かもしれませんが、できるなら高校在学中に発見していたなら、とも思えます。
さて、高校の通学区域については、平成14年に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が改正され、通学区域の設定は設置者の判断に委ねられています。
これを受けて、兵庫県においても、昨年4月に通学区域検討委員会から、「生徒にとって望ましい選択肢確保の観点から、通学区域を広げる必要がある」との中間まとめが公表されましたが、この報告を受けて県下の市町教育委員会、進路対策協議会などでは様々な意見が出され、但馬地域にあっては、市町長は学区見直しに反対の姿勢を示しており、それを受けて生徒や保護者に大きな不安が募っています。
こうした状況のもと、自民党県議団でも、まずは先行実施地における見直し手順とその効果などを検証する必要があると考え、18年度に全県1学区制に移行した滋賀県の現状を調査しましたが、その結果、
①従来進学できなかったエリアへの進学者は旧通学区の境界近くに住む生徒を中心に5%程度で、多くは従来通り地元に進学していること
②教科や行事、部活動などで特色ある高校の人気が高いこと
③各高校が生徒や保護者へのPRに力を入れだしたこと
等が確認できました。
一方具体的な成果が学力向上他あったのか?との私の問いについては、データ化されていないとの事でした。
地元に有名校を抱える市町は、より多くの市内に在住する高校生が地元の高校へ進学できるよう希望を叶える責任があります。一方、有名校が無い市町では、「有名校への入学枠を広げてほしい」との要望がある一方、少子化の波で地元高校が廃校に追い込まれるという不安も抱えています。
敢えて学区を見直す意義は何処にあるのか再度検証すると、理論的には、生徒の希望する学校のバラエティを増やし、その学校を受験できるような環境を行政が整備することにより、各学校に意欲を持った生徒が集まり、その結果、県ないし通学区域でのトータルの学力が向上する事にあります。
生徒が打ち込める教育環境が整備されている高校は「将来の進路」に寄与するものであり、生徒が自ら選んだ事と相まって、より意義ある高校生活を送ってくれると信じてやみません。勿論、通学時間・距離、経済的負担も加味した現実的な制度設計が求められますが、「偏差値、地域一番校」に限らずとも将来を生き抜く力こそを養わねばならないと考えます。
このように方策を進めていくと、高校も生徒にふさわしい進路に合った教育を推進する仕組みを創る上では、定量的、客観的に把握できる目標指標の設置が必要です。
具体的には、例えば・・・・
①全国学力テストで○○教科においては全校平均○○番を目指す
②部活動で全国優勝あるいは○位に入る
③東大、京大等に○○名を合格させる
これらを目標として設定するなら・・・・
④不登校生徒を○名以下にする
⑤遅刻早退を週○時間以内にする
⑥必修読書時間を全校平均○○時間を達成する
など目標達成のためのステップが必要になります。
中学校の進路指導も成績順での割り当てでは済まされなくなります。では学区制度改革をしなければ、これらが実現できないのか?との本質的な疑問に辿りついてしまうのです。
県教委は、魅力ある高校づくりと学区改編の関連をどう捉まえ、生徒に現行以上のどんな教育サービスの環境を与えようとするのか?
各高校の目標設定と達成への取り組みは、県立高校だけが単独で行い、過去の慣例や序列、あるいは地域性に従うのではなく、県教委の指導と連携で、人事権を発動しながら永続的な取り組みにしなければならない。