3月4日最後の百条委員会が開かれました。協議会で審議してきた報告書案を全委員で了承しました。その後全委員合立ち合いの下で報告書が議長に手交されました。
以下報告書抜粋
■運営
ア 委員会の会議は原則公開とし、インターネットによるライブ中継及び録画配信を行う。ただし、公開することにより事実関係が解明できないおそれがあるとき、個人のプライバシーに関わるとき等は、委員会の議決により秘密会とすることができることとした。
イ 公開の証人尋問を実施する場合においても証人本人の職位、経歴、文書での指摘内容の軽重、希望などを踏まえ、インターネット配信及び報道の撮影等について柔軟に取り扱うこととした。
ウ 委員は、秘密会で知り得た情報は他に漏らしてはならないこととした。
エ 委員会の調査は、基本的人権に最大限配慮して行うこととした。
(特記事項) R6.7.16(火) 理事会 7月2日付で元県民局長代理人から、人事課が調査で入手した元県民局長のプライバシーに関する資料の取扱については、基本的人権に配慮するよう求める旨の申し入れがあり、元県民局長のプライバシー情報を取り扱わない方針を決定した。 R6.8.2(金) 委員会 元県民局長の逝去に鑑み、証言をすることにより不利益を被ることへの懸念や心理的ストレスを訴える職員の声に配慮して、「個人のプライバシーに関わるとき」等以外でも、委員会を秘密会とし、その心理的負担の軽減を図ることができるものと決定した。 R6.10.11(金) 委員会 知事選挙への影響を考慮して10月24日及び25日の委員会を秘密会とし、本来の公開対象については、知事選挙終了後に録画映像、議事録等を公開する方針を決定した。なお、10月18日付で齋藤知事代理人から、正式に公開されるまでの間に委員が報道機関への情報伝達やSNS等で意見を述べないように申し入れがなされた。 R6.10.25(金) 委員会 委員長が片山証人の元県民局長のプライバシー情報に関する発言を制止したのは、7月16日の理事会での元県民局長のプライバシー情報に関する合意を踏まえたためである。なお、片山証人がプライバシー情報を話し始めたことは、委員長だけでなく他の委員も認識しており、制止に異議を唱えた委員はいなかった。 |
■調査費用 令和6年度 900万円以内
■開催状況について
本委員会は、令和6年6月14日の第1回開催から令和7年3月4日の調査報告書の決定まで、計18回開催した。この間、延べ34名の証人に対し計約42時間に及ぶ質問を行い、公益通報者保護法に精通した弁護士や大学教授を参考人として招致するとともに、84件の資料請求により不存在を除き提出のあった73件の資料等を精査し、聞き取り調査や書面調査のほか職員アンケートも行うなど精力的に調査を行い、多様な観点から調査事項の解明を目指した。
■総括
調査結果のとおり、調査項目のうち、「令和3年の知事選挙における県職員の事前選挙活動等について」、「次回知事選挙に向けた投票依頼について」は文書の真偽について事実確認ができなかったが、以下の項目については一定の事実が確認された。
「五百旗頭真理事長ご逝去に至る経緯について」は、片山氏から副理事長解任を伝えられた五百旗頭理事長が憤りを覚えていたことが認められる。よって、公社や外郭団体の再編や人員削減において、憶測や不信感が生まれないよう、対象団体の状況を公平公正に判断し、当事者をはじめ関係者に十分な理解を得る努力を怠ることのないように求める。
「知事が贈答品を受け取っていることについて」は、PR等でなく齋藤知事個人として消費していたと捉えられても仕方がない行為もあったと言わざるを得ない。昨年12月11日発表の「県民の信頼確保に向けた改善策の実施」において、一定の措置が講じられているが、受け取らない一定の基準を客観的に示すことや接待対応についてのルールの明確化も図るべきである。
「知事の政治資金パーティー実施にかかるパーティー券の購入依頼について」は、片山氏の依頼により経済界に影響力のある県信用保証協会理事長が疑念を抱かれる行動をとっていたことは否めず、一般職だけでなく役員も含めた政治活動や選挙活動に関わる倫理規程等を定めることが必要である。
「阪神・オリックス優勝パレードにかかる信用金庫等からのキックバックについて」は、資金調達が難航し、パレード後も継続して資金調達をする特異な状況に追い込まれていたことが認められるため、県が利害関係のある企業団体に寄附金や協賛金を依頼するにあたっては、行政運営に不信感を抱かれることのないよう細心の注意を払うことを求める。また、刑事告発されている背任容疑について、県関係者が起訴され有罪となる事態となった場合は、齋藤知事自らの管理・監督責任を重く受け止め対処すること。
「知事のパワーハラスメントについて」は、「パワハラを受けた」との証言は無かったものの、パワハラ防止指針が定めるパワハラの定義である「①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの」に該当する可能性があり、不適切な叱責があったと言わざるを得ない。前述の「県民の信頼確保に向けた改善策の実施」において、一定の措置が講じられているが、知事、副知事などの特別職を含む管理職等へのアンガーマネジメント研修の実施など、さらに踏み込んだ対策に取り組むことを求める。
公益通報者保護については、元県民局長の文書は公益通報者保護法上の外部公益通報に当たる可能性が高く、県の初動は、文書内容の調査をせずに通報者の特定を行うなど、不適切な対応に終始しており、現在も体制整備義務違反の疑いが指摘されている。初動対応のほかにも、調査方法や3月27日の記者会見、公益通報者保護法に対する関わり方ついても問題なしとはいえない。
この度の兵庫県の対応は、組織の長や幹部の不正を告発すると、告発された当事者自らがその内容を否定し、更に通報者を探して公表されたうえ、懲戒等の不利益処分等により通報者が潰される事例として受け止められかねない状況にある。
今後は、知事を含めた幹部職員が公益通報者保護法に対する理解を深めるとともに、組織内の不正行為や違法行為に関する告発に対しては、常に公益通報の可能性を念頭に対応することが不可欠である。さらに、外部公益通報に対応できる体制づくりを進めるとともに、告発内容の調査に当事者は関与しないこと、通報者探索及び範囲外共有等は行わないことの明確化が必要である。
井ノ本氏による元県民局長のプライバシー情報の漏洩については、告発者潰しを企図していたと言われかねない状況がうかがえる。弁護士による調査の結果を速やかに公表するとともに、県として刑事告発も含め、適切かつ早急な対応を求める。
知事は、3月27日の記者会見で元県民局長の文書を「事実無根」、「うそ八百」と評したが、約9ヵ月に及ぶ本委員会の調査により、文書には一定の事実が含まれていたことが認められた。
今回の文書問題を振り返ると、文書に記載の当事者である知事や幹部職員による初動対応や内部公益通報後の第三者機関の検討、元県民局長の処分過程など全体を通して、客観性、公平性を欠いており、法令の趣旨を尊重して社会に規範を示すべき行政機関の行うべき対応としては大きな問題があったと断ぜざるを得ない。
最後に、齋藤知事におかれては、本報告書の期するところを重く受け止め、兵庫県のリーダーとして厳正に身を処していかれることを期待する。また、文書問題に端を発する様々な疑惑によって引き起こされた兵庫県の混乱と分断は、いま、憂うべき状態にあることを真摯に受け止めなければならない。これを脱却し、一刻も早く解消するために、県民に対して過不足のない説明責任を果たすとともに、先導的かつ雄県の名にふさわしい進取の気質に富んだ兵庫県政を取り戻すことを切に願うものである。